澄姫です。
「嘘つき祝」という祝宴が中国地方にはあるそうです。12月8日で、この日にお豆腐を食べると1年の嘘が消えるのだとか。清姫が大激怒しそうなお祭りですが、全世界の人に義務化すればある意味嘘のない世界になりますね。何故お豆腐なのでしょうか。真っ白だからかな。清廉潔白。
イケメンな安珍の話
さてはて、清廉潔白であるべき立場でありながら清廉潔白とは対照的な行動を取った全清姫の怨敵にして愛し人、安珍さんのお話。
哀れながらも嘘はいけない、と一つの教訓を明示してくれる存在でもありますが、おおよそのイメージは嘘吐き逃走野郎です。
そんな安珍ですが、清姫と比べると長い時間の中でも変化の少ない人物です。芸能分野では色々と設定が追加されていますが、基本的な情報は変わらないまま。なお、賢学とかいう人は一応安珍と同一の役割を持っていますがここでは含みません。
安珍と言えば。イケメン。是必然之理也。
原初の原典法華験記でもイケメン、続く今昔物語集でもイケメン、道成寺縁起でもイケメン、芸能分野でもイケメン、民間伝承でもイケメン。大抵の清姫伝説は清姫が安珍を見て「好き!」ってなった一目惚れから始まるお話なので、ブサイクではそもそも物語が始まらないわけで。
CHECK【原典】『法華験記』について
CHECK【今ハ昔ノ】『今昔物語集』について
CHECK【転身絵巻】『道成寺縁起』について
清姫ちゃんが好きになっちゃう要素が欲しかったんでしょうね。
でもイケメン。ひたすらにイケメン。
この安珍が美麗な僧侶である、という点は民間伝承でもおおよそ変わりません。民間伝承では安珍と清姫の出会うタイミングが異なり、清姫の一目惚れといった描かれ方ではありませんがそれでなお安珍はイケメンです。
つまり安珍がブサイクであればあんなことにならなかったのでは……?
伝説や神話の類のイケメン、大抵ロクな目に遭いませんね。

Fate安珍はイケメンでホモだったけど実は一緒にいた老僧に惚れていたって話も見かけたね。
若僧な安珍の話。
さてもう一つ、安珍と言えば。若い。是大抵之通也。

清姫さんは「年増」だとか「未亡人」だとか「独身女」だとか「少女」だとか扱いがコロコロ変わり、そこから与えられる年齢のイメージも相当に変わります。
小説作品まで含めて年齢の幅で言うと13歳~30歳と言った感じ。
一方の安珍、年齢を思わせる記述が「若僧である」という一点でしか殆ど描かれません。
真砂伝承では16歳、若しくは27歳であったり、また夏目漱石の『虞美人草』では安珍の年齢を25あたりがよいのではないか、というセリフが挿入されていますが、とすると16歳~27歳となります。
いずれも「若い」と言って問題ないでしょう。同時に、解釈される清姫の年齢よりも幅が狭いですね。
これは「若い」という言葉が持つ利便性の影響という事もありますが、一方で「幼い」や「老齢」とはされません。これもブサイクと同じで清姫が好きになっちゃう若いイケメン、という他に、安珍が「若いが故に未熟な面もあった」というのを印象付ける要素もあったのでしょうね。
先程も述べたように、安珍は清姫に比べて変化が乏しいです。ですが、安珍の内面や性質が全くの不変という訳ではなくきちんと変化しています。
これは即ち、皆が清姫に対して様々な解釈を行い、様々な清姫が生まれたため相対的に安珍があまり変わらない存在、また同時に安珍を基本的に固定化する事によって、つまり安珍を軸として清姫の魅力を生んでいったとも考えられます。
なんたって主人公。安珍清姫伝説には安珍が居ないといけない。時代や時流に流されず、若くイケメンとして在り続けた安珍。彼の持つ魅力は、ある意味どの時代でも受け入れられたためにそのままの姿で描かれ続けたのやもしれません。

僧だね
これを解き明かしていきたいですね。
今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。