澄姫です。
たびたび誤脱誤用の話は話題になりますね。もともと文芸誌の編集部に居たことはありますが、20ページ程度の作品を十数名の人間が数か月チェックしてもいざ製本して世に出したら誤字が見つかった、と言うのはあります。というか毎年ありました。
当然、ないに越したことはありません。ですが、なぜか湧いてくる。つぶしてもつぶしても湧いてくる。作者側の責任でしかないのですが、恥をかくのもまた作者なのでそれで許してつかぁさい。
前に聞いた話では、「崇める」と「祟る」を間違えた例があるそうです。ぱっと見似てますが意味が真逆なのが何とも。
似ていると言えば。千葉県と紀伊半島って似てますよね。似ているらしいです。昔の人いわく。
そこへ清姫伝説が関わってくるお話。
紀伊半島と千葉県
結構このブログでお話していますが、「真砂」という地名の読みについて。
和歌山の清姫の地元は「マナゴ」
千葉県の地名は「マサゴ」
とそれぞれ違います。
この二つだけではなく、例えば「白浜」ですね。和歌山県の白浜には空港があります。千葉県にも白浜がありました。調べてみたら吸収合併されたようですね。今は南房総市にあるみたいです。
他にも「那智勝浦」「勝浦」とか「亀山」と「上総亀山」とか「網代」とか。
偶然ではなく、紀州の人が黒潮に乗って房総半島の辺りにたどり着くなど、古くからつながりが有ったそう。そのため地名が似通ったり、時には紀伊半島と房総半島は同一視される関係にあったようで。
地図が普及している現代ではちょっと想像しにくいですが、とりあえず紀伊半島は房総半島だったこともあった。その逆もしかり。
千葉県の清姫伝説
さすがに千葉県に高野山や熊野三山に当たるような神域はなかなか見られません。成田山とかですかね。
では清姫伝説はどうか。実は似ている話があるのでした。それが「垣根の長者の娘」の話。千葉県は銚子に残る話です。港町ですね。しかも結構大物が出てきます。
以下あらすじ。
垣根の長者とよばれる人物には、延命姫という娘が居た。
その延命姫はある日、安倍晴明という男と結婚する次第となった。
だが安倍晴明、一度は承諾した結婚だったが一晩たって思い直し、逃げ出してしまう。
晴明の逃げたことを知った延命姫は後を追う。
追われた晴明は途中崖の上で着物と履き物を脱ぎ、近くの寺に身を隠した。
追ってきた延命姫は晴明が身を投げたと思い、自分も身を投げてしまう。
まとめるとだいぶ短いですね。
どことなく漂う清姫伝説感。特に清姫の地元、真砂に伝わる伝承の方が近いでしょうか。焼いてませんからね。
安倍晴明と言えば日本ファンタジーの中で大人気。相当な大物です。安倍晴明は俗説の一つに千葉の出身であった、と言う話もあるようです。そこに清姫伝説が合流した形になりますね。
延命姫さんは後に神社にまつられました。現在の川口神社という場所がそこです。
僕も行ったことがありますが、石段を上った先にある小さな神社です。人が居るという訳でもなく、独特の雰囲気が漂う空間でした。銚子の方へ行った暁には是非に。
延命姫のお話も、紀伊半島の人が黒潮に乗って房総半島に伝えた清姫伝説が元になっているのではないか、と考えられます。そのご縁があって道成寺物が千葉で演じられたことも幾度か有ったそう。
逆に千葉県のお話が紀州にたどり着いて清姫伝説になったのではないか、と言う話もなくはないのですが、ほぼあり得ないでしょう。その割には和歌山県にいろいろ残り過ぎていますし、古い文献もいっぱいありますから。
銚子はあまり行く機会のある場所と言えませんが、港町なので海産物美味しいですし濡れ煎餅もあるし。ローカル線の銚子電鉄もあるので、都会の喧騒や日常から逃れて魚が食べたいときには是非。
今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。