澄姫です。
内容が同じでも中身の違う本、というのがあります。
何を言っているのかよく分かりませんね。
例えば参考書の類が分かり易いでしょうか。
同じ試験の対策本で、同じような内容を扱っているのにところどころ異なっている、というのは往々にしてありますね。
参考書であれば「この一冊で安心!」とか「わかりやすい○○」のようにタイトルが違うので(内容がほぼ同じであったとしても)違う本なのだと明確に分かります。
しかし全く同じタイトルで、内容も同じなのにところどころ違うので違う本である……と呼べる本があったら、大変に紛らわしいですね。
そんな大変に紛らわしい清姫の本のお話。
色々な道成寺縁起の話
清姫の原典で著名なものと言えば『道成寺縁起』でしょう。
室町時代に成立し、大蛇と成った清姫が安珍を焼き殺すシーンは印象的ですね。この辺のことは以前もお話しました。そして、道成寺の境内でも写本が展示されています。
CHECK【転身絵巻】『道成寺縁起』について
では『道成寺縁起』という名前の書物が一番有名で有ろう道成寺にある『道成寺縁起』だけかというとそうではなく。
『道成寺縁起』というタイトルの縁起絵巻、他にも数があるんです。
室町時代に最初の『道成寺縁起』が成立して以降、江戸時代にかけて多くの類本・類書となる『道成寺縁起』が成立しました。
二次創作だ!
作者が違うのは勿論、中身も若干違います。例えば追っかけっこをする安珍と清姫の行動であったり、また作風が違うので蛇になっていく清姫の様子も違います。謂わば絵柄の違いですね。
違う道成寺縁起の呼び方についての話。
しかしながら、内容は同じく清姫伝説を扱ったものですので、筋も『道成寺縁起』同士で大きく外れる事は有りません。
なので一概に『道成寺縁起』と言ってもコンガラガッチュレーションしてしまいます。
ただ、一般的に『道成寺縁起』と呼んだ場合は室町時代成立の『道成寺縁起』の認識で問題はありません。日本絵巻物全集・続日本の絵巻、続日本絵巻大成のいずれでも収録されている『道成寺縁起』はそれですからね。
そもそも、それ以外の『道成寺縁起』がろくに認識されていないというのもありますが。
だんだんと中身の深い清姫の話をしていくにつれて、初代以外の『道成寺縁起』に触れていく事も増えると思います。というか増えます。
なので僕は室町時代の初代とされているものを『道成寺縁起』、以降その他を『道成寺縁起類本』若しくは『道成寺縁起異本』と呼んでいます。必要があれば類本・異本の中でも細かく区別していきますけどね。
尚、類本とは「同種類の本・類似した本」という意味です。異本は「同一の書物ではあるが文字や語句に異同のあるもの」なので異本と呼んだ方が近いかもしれません。いずれにせよ区別はしていこうかと。
さて、この記事で何回道成寺と言ったでしょうか?暇な人は数えてみると無駄な時間を過ごせますよ。
今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。