澄姫です。
蒸し暑くなってマスクの鬱陶しい季節となってまいりました。命取りとなりますのでこまめな水分補給をしましょうね。
旅先でもマスクを強いられるのは何とも無粋なものですが、ご時世がご時世だけに致し方ないものです。周囲に誰もいない屋外の空間ならば折を見て一息もできるのですが、観光地の真っただ中だとそうもいかなさそうで。
山に登ってヤッホーもできない。
清姫に纏わる文献紹介をしようと思った話。
さて、今回は(今回も)いつも通り清姫の話ですが、ちょっとばかり趣向を変えて清姫の話をしようと思います。

怪文書を量産している。
何が言いたいかと申しますと、今回は清姫に纏わる本のご紹介です。今までも絵本やら小説やら絵巻やらいろいろ紹介してきましたけれど、一つの記事を使って一つの本を紹介していく感じにしていこうかな、と。
自分の持っている資料を共有できれば後続の研究者が増えて僕も楽が仲間が出来るかなって。
カテゴリだけ作って放置していた読書感想所や雑談のカテゴリを少しずつ生かしていきたい所存。そのうち読んでお気に入りだった本や何でもない話も少しするかもしれません。多分。でも清姫の話が多い。
一回でも清姫に関する名前が出てくればそれは清姫の本!
『蛇身伝承論序説』の話。
栄えある第一回は何度かタイトルを話に出したと思います、阿部真司さんの『蛇身伝承論序説』についてです。
清姫伝説の物語構造や、籠り型・渡り型二つの清姫伝説について話した時に挙げたかな?
こちらの本は1986年に新泉社という出版社から出ておりまして、いわゆる学術書・研究書の類になる書籍ですね。副題に「清姫の原像を求めて」とついています。清姫の名前がタイトルについている本は結構数が限られるので、僕が清姫について調べ始めた初期に行き着いた本の一つですね。
因みに全部は読んでいません。清姫に関係ありそうな部分がほとんど。
作者の阿部真司さんは高知大学の教授などをされていた方だそうです。専門は日本文学・思想史・哲学・倫理学など。
元々は別の出版社さんから出ていたようなのですが、倒産の憂き目にあい危うく絶版の危機だったそうですが先の新泉社さんから改版という形で再版されたようです。なので最初に出た方の『蛇身伝承論序説』には副題がついていません。

どっちの方がレアなんだろう……
日本には蛇の性質を持った神様が多いです。三輪山伝承とかイザナギ・イザナミとか。古事記や日本書紀のあちらこちらにチラチラと蛇神の影が見えるようですが、清姫以外は専門外なのでその辺は有識者にお任せするとして。
日本にはざっくばらんに蛇神のイメージがあって信仰があったよね→清姫のイメージや元もそこにあるんじゃないか、という流れの本ですね。
本の表紙に書かれている分を引用しましょうか。
古事記、日本書紀、風土記における三輪山伝承、イザナミ伝承から、道成寺説話にいたる神話伝承を精細に読み解くことによって、そこに脈流する蛇神信仰の原初的イメージと現象形式を追求、古代日本人の死と生をめぐる精神構造の根源にせまる。
阿部真司『蛇神伝承論序説』表紙より
蛇はセクシャルだったり生死の循環だったりを象徴している点を踏まえているようですね。
そもそも蛇、象徴できるものが多すぎて蛇がシンボライズされているものだけで世界がまるまる作れそうなくらいなのですが。
合わせて目次も。
- 序章 日本神話のなかの蛇神
- 第一章 三輪山伝承
- 第二章 倭迹迹日百襲姫命の死-巫女の死
- 第三章 イザナミ命伝承
- 第四章 肥長比賣伝承とその周辺
- 第五章 道成寺伝承
- 第六章 「蛇性の婬」試論
- 第七章 大物主神考
- 第八章 賀茂伝承の世界
やまとととびももそのひめのみこと。早口言葉かな?やまとととひももそのひめのみこと、と読む場合もあるようですが、本の中のルビは濁点がありになっていましたのでそちらに沿いました。
上でも述べたように、道成寺説話、つまり清姫伝説に関する部分では清姫伝説の物語の構造を整理し直したうえで籠り型・渡り型の二つに区分し、今昔物語集や絵巻物などを分類しています。この点は不肖澄姫も大いに参考にさせていただいている一方、一概にそうであるとはいえないのではないか、と異論を唱えている部分もあります。
Amazonとかを調べればあると思いますので、興味を思った方は是非。
2021年5月末の時点では中古で二万円ほどでした……改版前の方は見当たらず……
こんな高かったっけ
【書籍詳細】
阿部真司『蛇神伝承論序説~清姫の原像を求めて~』新泉社 1986年9月
ISBN-10 : 4787786156
ISBN-13 : 978-4787786159
今回はここ迄。お読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。