澄姫です。
書きためているので、記事を書いてから公開するまでに編集云々やらを含めてタイムラグがあります。公開される頃にはバトロワに飽きているかもしれないし飽きていないかもしれない。
この記事を書いている頃、キーボードが壊れました。Sのキーがうんともすんとも言わなくなってしまい困り果てることに。サ行って使用頻度が高いうえにいちいち別の作業を使わない単語に言い換えるわけにもいかず……。
しかも常用しているPCがsurfaceなので専用タイプカバーが中々なお値段。
なので仕方なくIMEの設定を弄ってSキーの役割をCキーに置換しました。ライフハック。
タイピングの感覚が変。
あっちこっちに広がった清姫伝説
清姫の話は和歌山県のお話です。
安珍は熊野参詣を志して来ていますし、清姫は熊野への道中に住まう女。若い僧侶がやってきて、且つ女の家に泊まらざるを得ない場所、と考えると不自然でないのは熊野の辺りが該当します。
桃太郎の話が成り立つには近くに川があって且つ、鬼の住むという噂の立つような島がある場所でなくてはならないように、清姫の話も成立するのに条件があったりするのですが、その話は今回置いといて。
清姫伝説の原話の話をするともっとややこしくなってしまうのでこれも置いとくとして、ともあれ清姫伝説は和歌山の話。ここはもはや揺るがないでしょう。
けれども、清姫伝説は和歌山県だけではなく全国各地にその姿を見ることができます。
妙満寺にある二代目の鐘の話もそれに近いですかね。
前に話したところだと、千葉の延命姫の話や、日高踊も和歌山のものではありませんし、山形県の黒川能には鐘巻が、沖縄舞踊の執心鐘入も異形とされます。他にもかんこ踊と呼ばれる近畿に伝わるものにも清姫伝説が散見されます。
北は東北、南は沖縄。清姫伝説は全国区のお話なのです。
さて、今回はその中で戸津坂本、現在の滋賀に残る清姫伝説が派生した物語の話をば。
『奇異雑談集』の清姫伝説
『奇異雑談集』という怪談話を集めたような説話集があります。
読みは「きいぞうたんしゅう」です。ざつだんしゅうではない。
成立は江戸時代のころ。江戸時代といっても幅がありますが、その中でも比較的初期である、と考えられるようです。記録上、開版(出版のこと)は1687年ですが、それよりも前に写本が確認されています。
因みに誰が編集したかとかはわかっていないそう。
さて、その中に『戸津坂本にて、女人僧を逐って、共に瀬田の橋に身をなげ、大蛇になりし事』というお話があります。
僧、女、追跡、蛇。
如何にも清姫伝説っぽいお話。実際に清姫伝説の派生の一つではないか、という説があります。まあ無かったらここで話していない気がする。
そこまで長いお話ではないので、興味ある人には読んでほしい意も込めて本文への言及は避けようと思いますが、僧と女が安珍清姫に比べて妙齢であったり嘘を吐いてはいなかったりと違いも見られます。ですが、おおよその構造は一致していると言って良いと思います。
注釈によると戸津坂本は琵琶湖の畔、比叡山の東麓一帯を坂本と呼び、その東の辺りを戸津と呼んだそうです。湖西線には比叡山坂本という駅もありますし、現地まで行けば具体的な場所もわかる気がする。琵琶湖の畔へ行った際にはぜひ。
この物語は岩波文庫『江戸怪談集(上)』(ISBN9784003025710)に収録されています。校注が高田衛という近世文学の研究者さんで、著作では清姫に関する話もしている人です。他には筑摩文庫の雨月物語も解説されています。
お手軽なのでぜひ読んでみてね。
今回はここ迄。お読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。