澄姫です。
一応文学畑の人間なので本は時折読みます。文字を書く事の方が多いのですけれどね。
なんでも雑多に読みますが、最近はややミステリーと中華ファンタジーが多め。何かおすすめの小説作品があったら教えてください。本当に何でも読みますしなんでも読めます。ドグラ・マグラを完読した以上怖いものは黒死館以外に何もない。
僕はオリジナル作品も書くのですが、完全な創作は不可能です。何か基にする他の作品や伝説があったり、物語の流れとして類似することはもはや当たり前。イラストで言えば構図が似る、と言うのと一緒です。人間、普通にしている姿勢にも限度がありますからね。
物語は神話と聖書とシェイクスピアで出尽くした、とも評されるくらいですからね。あとは源氏物語かな。どっかの世界線では言動がアレですが、凄いんですよシェイクスピア。いや本当に。
さてはて、今回は清姫の話をしましょう。もっと正確に言うと小説に纏わる清姫の話をいたしましょう。
清姫の小説作品
清姫伝説が主体となっている小説作品の列挙的紹介は過去に書いたのでそちらをご覧いただければ、と思います。
それだけで話を区切るのも味気ないのでおすすめの清姫小説の話もしましょうか。何時か個別の記事で書きますが、導入代わりに。
大岡昇平という作家の書いた『清姫』という小説が僕のおすすめです。この作品は大岡昇平全集に収録されているほか、怪奇・伝奇時代小説選集6『清姫・怨霊ばなし』にも収録されています。
内容としては清姫伝説を元にした小説の中では原典に忠実な形をとっており、また相当数の原典を下地に敷いています。表するならば小説版道成寺縁起のような、集大成と言ってふさわしい作品でしょう。清姫伝説は読みたいけど古典は難しそうだなぁ、と言う人にも大変おすすめです。
清姫の名前が登場した小説作品
さて本題に入りましょう。今回取り上げるのは清姫が登場した小説作品、ではなく清姫の名前が登場した小説作品です。
すごく簡単に言えばフレーバーテキストとしての清姫ですね。物語の中で会話に登場したり、比喩表現の一つとして登場します。なので清姫伝説を取り扱った小説、ではないのでご了承を。
清姫をどういう風にその作家さんが捉えているか、またはどのような伝承が残されているか……それが垣間見える面白い文献としても読めるので、興味持ってくださった方は是非とも。
なお、今回は作品紹介のみに留めます。是非読んでみて清姫を探してくださいな。
『富嶽百景』
作者は日本屈指の文豪にしてろくでなし、太宰治。代表作として『人間失格』『斜陽』『津軽』など、一つは読んだという方も多いでしょう。
人生で三回心中をしましたが、普通の人は一回で終わりますし心中という事は相手が見つからないといけないはずなんですけども、相手は全員違うしそれとは別に本妻が居た、とはどういう事なんでしょう。
そんな太宰の『富嶽百景』に清姫の名前がひょっこり出てくる。
あらすじは太宰治の師である井伏鱒二と富士の旅館へと滞在したりお見合いしたりと、全文でなくとも一部であれば教科書などで読んだことのある方もいらっしゃるでしょう。
その中の会話文で清姫が登場します。こんな女がいたんだようんぬんかんぬん。しかし、浮気しまくり紐生活の太宰が清姫の名前を出して怨霊に怒られないのでしょうか。
『虞美人草』
作者はこちらも日本屈指の文豪にして近代文学の礎を築いたと言ってもいい夏目漱石。『吾輩は猫である』『夢十夜』『こころ』など教科書頻出ですね。
夏目漱石は神経衰弱を患ったり貧乏生活が続いたりと苦労の人だったそうです。
東京帝大の講師職に就いたはいいものの授業は大変に不評だったとか。色々な要因はあったみたいですが、漱石の前職がラプカディオ・ハーン(小泉八雲)だったのも一因だそうで。そりゃ八雲よりも面白くするのは難しそうだ。
そんな漱石の『虞美人草』に清姫の名前がひょっこり出てくる。デ・ジャ・ビュ。
あらすじは男と女がいっぱい出てきてなんやかんやあって揉める話。色々と面倒くさいのでざっくり割愛。
虞美人草とはひなげしの花、西洋ではポピー。もとは新聞の連載小説で、漱石が立ち寄った花屋で花の名前を聞いたときに店員が虞美人草と答え、それが気に入りタイトルにしたのだとか。
まあこんな話の会話文に清姫の名前が登場します。こんな女がいたんだよ云々デジャヴ。あっちこっちで噂される清姫、忉利天でくしゃみばっかりになりそう。
『大菩薩峠』龍神の巻
作者は中山介山。僕はあんまり知らないです。
この『大菩薩峠』はシリーズ物の時代小説で、龍神の巻はその二巻目。ですが僕はあんまり知らないです。何せ入手したのは最近のお話でして、立派に積み本の仲間入りを果たして候。
この中で『清姫の帯』と呼ばれる気象現象について言及されています。不穏な予兆扱いですね。何時まで経ってもおこおこのへびおこ扱いな清姫さんなのであった。
上で述べたように皆さんもぜひ清姫を探して読んでみてくださいな。
しかし富嶽百景と言い、虞美人草と言い、葛飾北斎や虞美人などが急遽ゲスト出演してくれた回なのであった。
今回はここ迄。御読み頂き有難う御座いました。
では次回も……清姫の話をするとしよう。