清姫の話。【狂言師】奴道成寺について

ダブルピースで喜ぶ清姫 歌舞伎
この記事は約3分で読めます。

澄姫です。

イケメンって女の人の格好をして化粧をしてもやたら映えますよね。
一方で綺麗な女の人が男装をしてもまた然り、やたら映えますよね。

コスプレをしている方々で、格好いい人が居ると思ったら女性だったり綺麗なレイヤーさんだと思ったら男の人だったりと驚愕した経験がお有りな人もいらっしゃるでしょう。

いやはや、冴えない僕としては羨ましい限り。自分のしたい恰好をして映えさせられるというのは一種の羨望があります。服装にこだわりがあるわけでは無いですが、コスプレはちょっと憧れがあります。

歌舞伎の変遷について軽い話

恒例となった開幕の四方山話ですが、一応本題に関係のある話にしています。

んで、男装女装云々の話が何処に関係あると言うのかというと、今日は歌舞伎の話を少し。
元々歌舞伎は出雲阿国いずものおくにという女芸者さんが「かぶき踊」と言うものを演じ、そこから派生したとされています。

最初は遊女に広まっていったので「遊女歌舞伎」また、男娼なども演じ「若衆歌舞伎」となりましたが、どっちも幕府によって禁止。所謂男尊女卑のような意味合いもあったそうですが、役者の取り合いで事件も相次いだそうで。

そして結局、おっさんが演じる(ちょっと語弊がある気がしないでもない)形へと変わり、今の歌舞伎へと変化していきました。今も歌舞伎役者には男性しかいませんね。そう言った由縁であったりします。

奴道成寺の話

さてはて清姫の話。

前に『道成寺物』ひいては代表作『京鹿子娘道成寺』の話をしました。

CHECK【鐘への恨みは】『道成寺物』について
CHECK【道成寺物集大成】『京鹿子娘道成寺』について

『道成寺物』には数多くの派生が生まれました。役者を増やしてみたり振り付けを変えたり、舞台を変えてみたり。

簡単に言うとみんな飽きちゃうのでどんどん新しく取り入れて行ったりしたんですね。歌舞伎は江戸時代大衆娯楽、エンターテイメントでしたから同じ芸ばかりだとお客さんも飽きてしまうのです。今の「伝統芸能」なイメージとはちょっと違います。

そんなこんなで作り替えていく中。「道成寺物飽きてきたなぁ……せや!白拍子を男にしたら面白いんちゃう!?」。今で言う男体化ですかね。

それが『奴道成寺』という演目。初演時は『道成寺真似三面どうじょうじまねてみます』という演目だったそうな。

この『奴道成寺』は鐘供養にやってきた白拍子が清姫……ではなく、狂言師だったというお話

狂言師というのは狂言の役者を指す事もありますがここでは狂言、即ち嘘を吐いたりして人を騙す詐欺師のような人を指します。

道成寺にはそんな狂言師左近がやって来て踊りを舞うのですが、物語の途中で道成寺のお坊さんに「あれ?こいつ男じゃね?」とばれてしまいます。

しかしそのまま舞う事を許され、女の踊りと男の踊りを組み合わせた見ごたえある踊りや、黒子と呼ばれる人との抜群なコンビネーションで魅せる場面などを展開していきます。おおよその筋は普通の道成寺物と変わりません。

僕が初めて見た道成寺物はこの『奴道成寺』が初でした。それどころか、歌舞伎の初観劇もそうでした。結構思い出深い作品です。
DVDも出ているので、其方でもぜひご覧頂きたく思う所存。

因みに、踊り手が二人の二人道成寺物の中に、『男女道成寺』という演目があります。

これは白拍子花子と狂言師左近の二人が舞う、娘道成寺と奴道成寺のいいとこどりみたいな演目ですね。これもおススメです。おススメじゃない道成寺物を探せと言われたら困るのですが、おススメです。

男性版道成寺、娘道成寺に飽いた頃にでも如何でしょうか。

今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。