澄姫です。
前回、お寺云々の話をちょこっとしましたので神社の話もしましょうか。神社とお寺の違いは、神社が神様を祀りお寺は仏様。
八百万の名に相応しく全国津々浦々あらゆる神社が建っています。熊野神社や稲荷神社などはひたすらに有りますね。
熊野の信仰ってごちゃまぜだよね、な話
正月、お寺で除夜の鐘付けば神社で一年の安寧を願う、とはこれ如何に。
日本人が多宗教・無宗教と呼ばれるに相応しき由縁とも言えます。社寺、と両方ひっくるめた単語があるくらいです。一緒にしちゃって仏様と神様喧嘩しないんでしょうか。
元々の日本は神仏融合していたのが大きな原因であると思います。本来そんなんなのでクリスマスやバレンタインを受け入れてイベント化させる事が出来たんでしょうね。
熊野は神仏融合の最たる例で、現在は天照大神・伊邪那岐命・伊邪那美命・素戔嗚を祀っていますが、大昔には仏教の一つである法華経が納められていました。
しかし、祀ってある神様皆仲悪そうなんですけども……。
ともあれ、熊野=色々な有り難い物のような扱いでした。熊野権現もしかり、とにかく凄い物・良い物という感覚だったんでしょうね。
道成寺由来の縁起話、宮古姫伝説の話
では四方山話も終えて本題にそろそろへ入りましょうか。
社寺には「縁起」と呼ばれるものが伝わっている事があります。この縁起には複数の意味がありますが、その中に「社寺の由来、または霊験などの伝説。また、それを記したもの」があります。
柔らかく言えばお寺・神社の意味や元だったり、神様仏様の御利益話って事ですね。
さて、清姫伝説の舞台たる道成寺にも由来となる物語が存在します。
それが『宮古姫伝説』です。
先ずはともあれ話の筋からお話ししましょう。
以下あらすじ。
昔々、日高川の河口に九海士という村がありました。
そこの長と奥さんは中々子供に恵まれませんでしたが、氏神様を拝み続け四十を過ぎた頃にやっと女の子を授かり、「宮」と名付けられました。
宮は大変可愛く育つのですが、髪の毛が一本も生えてきませんでした。両親は不憫でなりません。
そんなころ、海では夜に怪しい光が現れ、魚が取れなくなってしまいました。
奥さんは「娘に髪が生えないのは自分たちの前世の報いだろう。善業をして功徳を積めば願いが叶うかもしれない」といい、不安がる長を説き伏せ、深い海へと潜っていきました。
やがて、深く潜った奥さんの息が絶えてしまうかという時、怪しい光に包まれて気絶をしてしまいました。奥さんは何とか救出され、髪の毛に五センチほどの仏さまが輝いて居ました。
長と奥さんはその仏像を祀り、毎日毎日拝みました。
そんなある夜、奥さんが不思議な夢を見ました。
枕元に金色の仏さまが佇み、「日頃の善行により、願いをかなえてやろう」と言いました。そして奥さんは「自分たちには望む物は御座いません。しかし、可哀想に娘は髪の毛が生えません。是非、黒髪をお授け下さい」と言いました。
そして次の日からも熱心に仏さまを拝み続けました。
すると、不思議な事に宮には髪の毛が生え始めました。それからも毎日毎日拝んだので、髪はぐんぐん伸び続け、娘になる頃には七尺余りの長さとなりました。
長くつややかな黒髪のみならず、大変美しく成長したので宮はいつしか「髪長姫」と呼ばれるようになりました。そして「仏さまから授かった髪の毛なのだから抜けた髪の毛も粗末にせぬように」という両親の言いつけを守り、抜けた髪の毛は木の枝に掛けていたのです。
その髪の毛を一羽のツバメが加えて飛んでいき、都へと飛んでいきました。そして都の御殿で、七尺の黒髪が見つかり、それは藤原不比等という内大臣の耳にも入りました。
不比等は髪の持ち主を探すように命じ、宮は都へ来るようにと言われます。そして、不比等の養子になり、宮古の名を付けられてやがては時の天皇、文武天皇に見初められその夫人となったのです。
夢のような出世を遂げた宮子でしたが、別れた両親のことが心配でなりません。そんな宮子の悩みに気が付いた文武天皇は、紀道成という人物に命じ、故郷に寺を建てさせました。
途中で道成は死んでしまったりしたのですが、そんな道成にちなんでそのお寺は「道成寺」を名付けられたのです。そして、道成寺には千手観音が祀られ、その中に仏さまが納められたと言います。
不思議な話ですね。
髪の長いお姫様の話は日本のみならず海外にも散見します。
例えばラプンツェルとかが代表例でしょうか。
さて、この宮子さんですが物語上の人物ではなく実在した人物です。
不比等の娘であった、というのも本当の事。そして道成寺の建立が文武天皇の勅願によるものであるというのも歴史的事実のようです。
そしてこの宮古姫の物語が存在しているからこそ浮かび上がる疑問点もあるのですが……これはまた別のお話。何せ相当に長くなりますからね。
道成寺の由縁たる宮古姫伝説。のちに清姫伝説の舞台ともなりました。二人の姫が波乱万丈な人生を送ったのですね。
安珍清姫伝説の終着点にも別の物語があったんだねえ
今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。