清姫の話。【生臭】聞いたか坊主について

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澄姫です。

よく世俗に塗れ堕落したお坊さんを指すときに生臭坊主という単語を用いますね。

これは禁止されている魚肉や獣肉などの生臭い物を口にしている、即ち戒律を守らないという意味から来ています。

基本的にお肉は駄目ですし、お酒もダメ。女人も禁制……と修行の道は厳しいですね。
僕は無理です。三日坊主になるでしょう。

清姫伝説にはお坊さんが出てくる

清姫伝説には仏教説話としての側面がある、というのはたびたびお話してきました。

舞台がお寺という事もあり、仏教とは切っても切れません。そして、話の中にも当然お坊さんが登場します。安珍だって一応お坊さん、僧侶として登場して居ますね。

道成寺の僧侶達は助けを求めた安珍を、目の前に怒り心頭の大蛇清姫が迫っているにもかかわらず助けてくれましたし(安珍が駆け込んできた当初はやや疑って居ましたが)、高僧に至っては蛇の夫婦となってしまった安珍と清姫を法華経によって救い、それぞれ天界へと供養してくれました。

何せ仏教説話として成立して居ますからね。あまり悪いように書かれる事はありません。

澄姫
澄姫

その割には道成寺というお寺の威信はズッタズタですが

ですが芸能分野の清姫伝説、道成寺物に出てくるお坊さんたちはどうもきな臭いというか生臭いというか。結構堕落して居ます。
今回はそんな生臭坊主、聞いたか坊主についてです。

生臭坊主な聞いたか坊主の話

登場するのは歌舞伎『道成寺物』、白拍子花子が鐘供養へとやってくる後日談に出てきます。

この「聞いたか坊主」というのは俗称で、「聞いたか聞いたか」の掛け声で入場する事にちなんでいます。「聞いたか聞いたか、聞いたぞ聞いたぞ」のフレーズ、道成寺物の始まりなので結構印象的かもしれないですね。

この聞いたか坊主、正式には所化しょけと言い、歌舞伎の筋書でも役名は所化として記述されています。

所化とは修行中の僧侶、広義的には寺に努めている役僧を指す事もあるそうです。きちんとここに名前がありまして、東方坊、西念坊、文珠坊などなどそれっぽい名前が並びます。それっぽいも何も実在するやもしれませんが。

さてこの聞いたか坊主達、坊主としては生臭も生臭。
本日は鐘の供養、そこに聞いたか聞いたかと掛け声をしながら聞いたか坊主たちがやってくる。

「さっきから聞いたか聞いたかって、何を聞いたというんだい」
「そりゃああれだよ、今日この寺で鐘の供養をやるんだとさ」
「ああそうだったねえ、鐘供養だ鐘供養、なのでわたしゃこの般若湯を持ってきたよ」
「おお、そりゃ結構だ」
「なれば拙僧は天蓋を持ってきたよ。供養の間暇だからねえ」
「おお、そいつも結構だ」

般若湯はんにゃとう天蓋てんがいも隠語で、般若湯はお酒、天蓋はタコの事です。

風邪には般若湯、これは薬だから飲んでいいんだよ、という誤魔化しです。兎を一羽二羽と数えるようなものですね。

つまりこの坊主達、供養の間暇だからつまみでも食べながら酒でも飲んで居ましょうや、となんとも堕落し切ったお坊さんなのでした。

その後花子が現れた時も「あれは白拍子だ!」「いや生娘だ!」と言い争う場面も。お坊さんが女の子の処女云々を気にするってどうなんでしょうね……。

歌舞伎の登場人物ですから、茶化したり風刺的な意味を持っている部分もあったんでしょうが、堕落し切った聞いたか坊主……あんな坊主を目の前にしたせいで怨霊清姫ちゃんがパワーアップして鐘に登っちゃったんじゃないのかなぁ、と思ってしまいます。

演じられる舞台によっては聞いたか坊主に台詞の追加があり、「今の白拍子どこかで見たことあるな……」「あ、あれじゃない?今歌舞伎座で舞台やってる役者(白拍子役の人)」「あ、あの人か!」と行くお茶目な会話もしています。

ばぐ
ばぐ

おもろい

なんたって大衆娯楽。今でこそ敷居高くとも、元々は観客を面白がらせたり驚かせるのが目的でしたからね。

今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。