清姫の話。【構造】続・安珍清姫伝説の物語構造の話。

寝てるしろいきよひー 清姫の話
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澄姫です。

喉を痛めました。乾燥とかもあるのでしょうが、喉に近い辺りに口内炎が出来て炎症が広がって痛めているようです。嚥下にも辛いので何とも悩ましところ。
龍角散が手放せませんね。

この記事が投稿される頃には治っているといいなぁ。

清姫伝説の物語構造についての話の続き。

前回、安珍清姫伝説がどのような物語構造を持っているのか、という話をしました。詳細はそちらをご覧いただくとして、簡単に振り返ると清姫伝説は

来訪→愛欲→約束→破棄・逃走→清姫の怒り→転身・追跡→鐘入→鐘巻・離別→供養譚

と九つのパラグラフに分けられます。

同じような感じに清姫伝説を解体している人だと、『蛇神伝承論序説』の阿部真司さんなどがいらっしゃいますね。かくいう僕も参考にさせていただいております。阿部さんは今昔版などの「籠り型」と『道成寺縁起』などの「川渡型」をそれぞれ分けて物語構造を抽出していましたが、僕はそれらを含めた清姫伝説全体の骨格的物語構造を抽出したわけでございます。

前回もちょっと言いましたが、こんなことを目論んだのは「物語で何が起これば清姫伝説と呼べるのか?」という話になるんですね。

例えば桃太郎なら

川から桃が流れてくる・桃から男の子が生まれる・男の子が成長して鬼退治に行く・道中犬猿雉を仲間にする・鬼が島で鬼退治をする

という場面がないと桃太郎とは違う物語になると思います。特に桃から生まれてくるあたりがキーポイントですね。玉ねぎから生まれたら玉ねぎ太郎に成っちゃいますもんね。んなわけないか。

さて、清姫伝説を同じ観点から見ていこうとするといきなり問題があります。

今回は『今昔物語集』と『道成寺縁起』の二つに限って抽出したわけですが、それを「総体としての清姫伝説の骨格だ!」とは言い切れない部分があります。例えばラストの供養譚ですね。民間伝承とか、あとは『日高川草紙』とかだと安珍清姫が死んだ後に供養されるとは限らない。なので、実は供養譚って清姫伝説の成立要件ではなかったりします。

さらに細かい話をしていくと、ストーリーの順番や、感情、行動、舞台、人物像が異なるほか、『奇異雑談集』や『古今弁惑実物語』などに収録されている清姫伝説の派生まではカバーしきれなくなります。

骨格的構造が一致するからこれも清姫伝説の亜種である、と言えなくなっちゃうんです。

なのでもっと単純にします。また桃太郎さんにご出演頂きましょう。さっき上げた構造から

桃を起点とした異常出生譚+生き物を連れた鬼退治

と二つの話が組み合わさった形に解釈しましょう。そうすると桃の出どころや拾った人物、鬼退治の舞台、鬼退治のメンツなどがズレていても構わなくなるわけです。桃から生まれた人物が、仲間とともに鬼退治をする。桃太郎ってめちゃくちゃ単純にするとこの二つの物語的構造で成り立っているんですね。

では清姫伝説を単純にしていきましょうか。ここで気をつけたいのは、すごく単純にしてしまったりそのやり方を間違えると、何でもかんでも清姫伝説って言えるようになっちゃうので、注意していきたいところ。

清姫伝説の物語構造を単純化~女人化蛇譚と鐘巻譚~

さてはて。
清姫伝説の大きな特徴、桃太郎でいうところの「桃からの出生」や「鬼退治」に該当するような場面はどこになるのか。

この辺は予想がつくかと思います。

清姫の蛇への転身、そして鐘巻ですね。安珍と清姫の夫婦喧嘩……じゃなくて痴情のもつれはここでは清姫が蛇になった原因、として扱おうかと思います。そして供養譚は前述通り、民間伝承などでは省かれるので成立要件に含みません。有った方が格式が高くなる、程度に思ってくだされば。

となると清姫伝説は

女が蛇になる話+蛇が鐘を巻く話

の二つが揃うと清姫伝説になる、と整理できますね。

清姫ではなく「女」としたのは清姫の名前が出たのは江戸時代以降だから。
更に「道成寺」という名称は欠いても問題がない模様です。というのも、清姫伝説が派生していった中には寺の名前を欠くものがあります。『日高川草紙』とかが代表例ですね。

因みに、清姫伝説を道成寺説話、と呼称する場合もありますが、基本的に同一です。清姫伝説=道成寺説話、ですね。物語内に「道成寺」の記述がなくとも、道成寺説話と呼称する要件はそろうと僕は思っています。この辺は見解が分かれるところ。

話を戻すとして、女が蛇になる物語、として田中貴子さんという方が「女人化蛇譚にょにんかじゃたん」という呼称を提案されていました。氏は道成寺説話という呼称が果たして適切なのか?という論点から提案されていた呼称ですが、僕は女人化蛇譚はあくまで清姫伝説(道成寺説話)の素材・パーツの一つに過ぎないのではないかと考えています。この辺はまた次回にでも話しましょうか。

後半の鐘巻は言うまでもないですね。蛇になった清姫が鐘を巻いて、キシャーとなった訳に御座います。この部分を鐘巻譚、と呼称しましょうか。これは僕のオリジナル。鐘巻のお話ですが、果たして「清姫が蛇であるから鐘を巻くことになった」のか、「鐘を巻くために清姫が蛇とされた」のかはまた難しい所ですね。

余談余談。

纏めると、清姫伝説は女人化蛇譚+鐘巻譚(+供養譚)で成立している、と言えるでしょう。供養譚の有無は述べた通り物語によって変わるので、清姫伝説として呼べる要件には含まれないと考えられます。

鐘巻譚は兎も角として、女人化蛇譚に関しては「何を原因として女が蛇になるか」という部分に着目した上でまだ細分化できると思います。清姫の場合は安珍に起因するので、例えば生け贄に捧げられたとか、天罰のようなもので蛇になったとかそういうものではありませんからね。
この辺は清姫伝説以外の女人化蛇譚を広く分析していく必要があるので、伸びしろです。

清姫伝説の研究をしているとはいえ、そろそろ清姫伝説以外のことも探求していかないと、きよ姫伝説とその他の物語の差異を述べられなくなりつつあるので精進したいところ。

さてはて。
今回はここ迄。お読みいただき有難う御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。