清姫の話。【構造】改めて、安珍清姫伝説とはどんな物語か。

服装を悩む清姫 清姫の話
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澄姫です。

今秋の話ですが、今週ではなく今秋の話ですが、京都妙満寺にある二代目道成寺の鐘が里帰りするそうです。鐘を作ったときの施主かなんかそんな感じの偉い人の生誕か没年か七百周年とかで催されることになったそうで。

結構あやふやな事しか言ってない。

鐘が里帰りするのは実際のイベントだそうで、結構長い期間公開もされるとか。
本来は11月の頭に催しごとも企画されているようですが、このご時世どうなる事やら。
無事開催されると良いですね。その暁には僕も出没していると思います。

詳しくは道成寺の公式サイトを確認してみてね。

また回し者のようなことをしている。

安珍清姫伝説の物語構造を考えてみたって話。

安珍清姫伝説についての話をします。いつもしてますね。

今回は改めて「安珍清姫伝説ってどんな物語だっけ?」って話を込み入ってやろうかなと思います。

今でこそ安珍清姫伝説といえば、安珍に恋した清姫が約束をしたら安珍が逃げて清姫が追って蛇になって川に飛び込んで道成寺で鐘に入った安珍を焼き殺して、ちゃんちゃん。といったところになりますが、今回はそのような話ではなく安珍清姫伝説はどのような構造を持っているのか、という話をします。

前々から清姫伝説は籠り型だの渡り型だの、千年にも及ぶ長い歴史の中で変遷を遂げてきたと書いてきました。簡単に言えばバリエーションが多いってことです。そのバリエーションの中にも、共通して描かれる場面、というものは存在します。場面に限らず登場人物などでも良いのですが、その共通する場面こそが清姫伝説の骨格とも呼べるわけですね。

その骨格を構造的に抜き出してみたので、その話です。

小難しいですが、すごく簡単に言えば「全部の清姫伝説で変わらない場面ってどーこだっ」というお話なわけですね。それを転じて、清姫伝説が清姫伝説として成立するために必要な要素が分かるんですね。

一応構造主義的アプローチをしているのですが、構造主義に関しては僕もうまく説明できる気がしない……主に言語学や心理学において、どのような組み合わせや関係性を持っているか、というのを構造的に分解したり整理して解釈する方法論の一種です。レヴィ=ストロースとかが大家ですね。

結構つまずく人が多くて、難しくちんぷんかんぷんとなってしまいがちな領域ですね。

建物の構造で例えていえば、柱とか壁とか天井とか、それがどう組み合わさっているか、って考えるってことですね。最初は単純に柱、とした後に材料や性質、立ち位置、役割とかを加味して壁との関係性や天井との嚙み合い方とかを考えていく、って感じです。

そして建物を利用するとき、大抵柱とか壁とか天井とかあまり意識されませんよね。

僕がすんなりと受け入れられたのは、構造主義は「自分たちが無意識にやっていることを解体してみた」ってものだと解釈したからです。そこから組み合わせて行ったり元の形に直して行ったり、というアプローチがあるわけで。

気になる人はレヴィ=ストロースとか『記号論入門』とか読んでみてくださいな。

安珍清姫伝説の物語構造

ちょっと話が逸れましたね。この度僕は清姫伝説を物語がどんな構造を持っているのか、という視点から解体してみたわけでございます。

上でも述べた通り、清姫伝説は長い歴史を経てきたので物語がちょいちょい変わっています。その中で色々な清姫伝説の共通項を抜き出せば、清姫伝説が清姫伝説として成り立つために必要な要素がわかる!……のですが。

如何せん数が多いのと、既に同一の物語として認識されているのであれば無理矢理数を揃えなくても、物語の流れが違ういくつかの作品を取り上げれば全部から抜き出す必要はないんじゃないかな、って。

なので今回は、籠り型の清姫伝説代表として『今昔物語集』、川渡型代表として『道成寺縁起』にご出演頂きます。宜しくお願い致します。

前置きが長くなりましたが、二つの清姫伝説から共通する物語構造を抜き出すと次のようになります。簡単に解説を加えていきますね。

共通する物語構造
  • 1
    来訪

    いずれの清姫伝説においても、安珍は清姫の住む場所とは異なった空間からやってくる存在である。そしてこれは物語の冒頭に置かれる。

  • 2
    愛欲

  • 3
    約束

    主に清姫から、安珍に対するアプローチが見受けられる。安珍は即時の了承ではなく、約束という形で時間的に先延ばしをしている。民間伝承では「大人になったら嫁にする」という冗談も、清姫の視点からは約束された事項だったのであろう。

  • 4
    破棄・逃走

    安珍は清姫との約束を履行することが出来ないため、清姫の住む空間から距離を取ろうとする。逃走は清姫に追われることに起因することが大抵だが、空間からの脱出を逃走とするのであれば、破棄と逃走は一体であると考えられる。

  • 5
    清姫の怒り

    安珍逃げたへびおこ。うそつきしゃー。

  • 6
    転身・追跡

    籠り型と川渡型最大の相違点。
    籠り型では転身→追跡となるが、川渡型では追跡の過程で転身を伴う。前後関係の相違から、転身と追跡は同一のフェーズとして捉える。

  • 7
    鐘入

  • 8
    鐘巻・離別

    安珍鐘に引き籠る。
    蛇な清姫巻き付いて焼き殺す。離別、と書いたが安珍清姫両名の死亡と捉えて良い。

  • 9
    供養譚

    『今昔物語集』と『道成寺縁起』では同様に供養譚を伴っているが、民間伝承とかだと供養譚がなかったりする。今回の対象があるので加えてる。ない清姫伝説もあるので括弧書き。

こんなところですね。一つ一つもっと詳しい説明を論文では書いたのですが、ざっと要約すればこんな感じになります。

以上の物語構造が一連の流れとして並んでいれば、安珍清姫伝説、として呼べるわけですね。
特に清姫伝説は多くのパターンがあるため共通項と成立要件の抽出は容易でしたが、この段階にきてようやく「じゃあ違いはどこなんだろうね?」って話が出来るようになります。それはまたいずれ。

もうちょっとだけ続くのですが、長くなってきたので一回切りましょうか。次回も清姫伝説の物語構造についての話が続きます。

さてはて。
今回はここ迄。お読みいただき有難う御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。