清姫の話。【転身絵巻】『道成寺縁起』について

道成寺縁起絵巻と清姫 清姫の話
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澄姫です。

清姫伝説の文献紹介三回目。
今回は清姫伝説の代表とも呼べるこの作品。
道成寺縁起絵巻』についてです。

ばぐ
ばぐ

しっ……しってるうう!!

『今昔物語集』や『法華験記』の清姫伝説は知らなくとも、『道成寺縁起』なら知っている、という人も多いのではないでしょうか。名前からして「こいつぁ清姫伝説に関係あるに違いねぇ!」となりますね。

ばぐ
ばぐ

違いねぇ!!

しかしながら、普通に生活していて絵巻物なんてそうそう目にする事もありません。というか人生でも絵巻物を目にする機会なんてそう訪れるものではないですよね。

しかし此処こそ紀州に名高き鐘巻寺こと道成寺。そこには摩訶不思議な縁起絵巻が一つ。
では、そんな『道成寺縁起』のお話。

鐘巻寺の縁起絵巻『道成寺縁起』

概要

まずは例の如く概要から。
絵巻物である、というのは上記の通りですが、上下二巻に分かれています。

すごいドヤる清姫

上巻は清姫伝説の始まり、安珍と清姫が出会ってから逃げた安珍を追って清姫が日高川に飛び込み、完全な大蛇と成ってしまうまで。


下巻は道成寺の建立についてを挟んで、清姫が安珍を鐘ごと焼き殺し、後に二匹の蛇を道成寺の高僧が供養するまでを描いています。

ほぼ全編清姫伝説ですね。これまでは簡単に言えば短編集の内の一編、のような扱いでしたがやっと清姫伝説という個別の物語となっていきます。

さてこの『道成寺縁起』、結構謎が多いのです。

一つは成立年。

1573年、時の将軍様、足利義昭が道成寺に来て道成寺縁起を読んだ、という証として花押が見られるのでそれよりも前に成立した事は分かりますが……15世紀頃に作られたのだろう、ということ以外分かっておらず、具体的な成立年が不明なのです。

一説には1428年であるともされますが、真偽は分からぬまま。

もう一つは作者です。

これまた一説によれば詞書(文章)を後小松院、筆(絵)を土佐光興ではないかとされていますが、やはり真偽は不明なまま。あまり知らない名前が出てきましたね。僕も良く知らないので調べたらまた記事にしましょ。

これを勝手に清姫伝説七不思議の其の二としておきましょう。残りの五個はまた考えておきます。
ですが、少なくとも舞台たる道成寺も制作に携わっていたようです。物語の舞台がお話に介入してきた分かりやすい例かもしれません。

ばぐ
ばぐ

七不思議作ろうとしてる

鐘巻寺の清姫伝説

では『道成寺縁起』の清姫伝説についての話です。
今までの清姫伝説とは物語がちょっと変わります。

スク水で照れる清姫

先に上げた『今昔物語集』『法華験記』では、清姫が安珍を追いかけながらだんだんと蛇になっていくという場面、存在しません。

ですが『道成寺縁起』、絵があるというのが最大の特徴ですから、清姫が安珍を追っかけるシーンが横並びにずらーっと描かれていきます。

道成寺縁起絵巻から「火を吹き迫る清姫」と「日高川を渡る安珍」

清姫と言えば安珍を追いかける途中で段々と蛇になっていく、というのが印象強いですがその印象そのまま。文字では分かり辛くても絵になれば分かり易いですから、上手く絵巻物の特徴を生かしたと言えるでしょう。

あとはやっぱり燃やす場面。迫力のある絵が描かれており、一見に値します。

それ以外にもところどころ変わってきているのですがそれはまた別の機会に。

また、安珍と清姫の名前はやっぱり登場せず、一方でキャラクター性に富み始めている面が見え始めるなど、色々変わってきています。清姫伝説が一つの形として集成したのが『道成寺縁起』と言っていいですね。

まだまだ話したい事は山ほどあるのですが、多すぎて長くなりそうなので『道成寺縁起』については一旦終わり。

『道成寺縁起』は道成寺に行けば写本を見る事が出来ます。行く機会があればぜひご覧になっては如何でしょうか。

今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。