清姫の話。【今ハ昔ノ】『今昔物語集』について

今昔物語集の清姫 清姫の話
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澄姫です。

清姫伝説の作品紹介2回目です。
今回は『今昔物語集』について。

『古事記』や『源氏物語』と並んで古典を代表する作品と言えましょう。中学高校の授業で触れた、という方も多いのではないでしょうか。やや敬遠されがちな古典文学の中では比較的馴染み深い物語でもありますね。

今は昔、今昔物語集とは

では最初に『今昔物語集』とは何かについてです。

宙に浮いて寝る清姫

『今昔物語集』、実は成立年や作者が不明です。様々な物語を一纏めにした説話集であるため、少なくとも誰かの手によって編集されたとは言えるのですが、何処の誰が、何時頃作り上げたのかは分かっていません。
しかしながら、収録されている物語の内容を鑑みるに、1120年前後ではないかとされています。

説話集である、と軽く触れましたが、本当にいろいろな物語を収録しています。
全部で三十一巻あり、お釈迦様のお話から霊験譚、怪異譚や滑稽譚まで実に様々。

ですが全三十一巻のうち八巻・十八巻・二十一巻が欠巻、つまり残されていないので内容は分からないままです。

澄姫
澄姫

残念。

内容についてさらに詳しく言うと、
一巻~五巻までが天竺、つまりインドのお話。
六巻~十巻までが震旦、つまり中国のお話。

そして十一巻~三十一巻までが本朝、日本のお話です。
更に本朝(日本)は仏法部と世俗部に分けられます。簡単に言うと仏教のお話とそれ以外の大衆的なお話ですね。

欠巻があるので全部で幾つの物語が収録されていたのかは分かりませんが、それでも凄い量のお話が収録されている……と思いきや、他の本から物語が写された物も多いです。
前回ご紹介した『法華験記』からも写され、全百二十九編のうち百五編に関係があると見られ、清姫伝説もそのうちの一つだったりします。

そして『今昔物語集』の特徴として物語が「今ハ昔」で始まり「トナム語リ伝ヘタルトヤ」で締めくくられるということ。
「今となっては昔のだが~(中略)~というふうに語り伝えられているのだという」という感じですね。ほぼ全ての物語に加えていったのですから、大変な作業だったでしょう。執念が凄い……。

今は昔な清姫伝説

では、今となっては昔の清姫伝説のお話。

布団に潜っている清姫

『今昔物語集』で清姫伝説は巻十四に収録され、タイトルを「紀伊国道成寺僧写法花救蛇語第三(きいくにどうじょうじのそうほっけをうつしてへびをすくうことだいさん)」とします。長い。蛇のように長い。
道成寺、と出ているからタイトルだけで清姫伝説だと気が付きやすくなっていますね。

ばぐ
ばぐ

なるほどきよひー

ですが、先程もお話したように『法華験記』を下地にして写されたため、物語の流れや表現はあまり変わりません。

なので安珍や清姫の名前も登場せず、清姫が追いかけながら蛇になったりもせず……。
ですがところどころ補足するように改変されており、研究的な視点から見ると全然違う物語とまで言えるのですが……またそれは別のお話。

そして『今昔物語集』は清姫伝説の文献としては『法華験記』に次いで二番目に古いものとされています。それでも法華験記から百年近く経っているんですけどね。

今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。