清姫の話。【原典】『法華験記』について

法華験記と文字を書く清姫 清姫の話
この記事は約3分で読めます。

澄姫です。

今回から数回にわたって、作品ごとに分けて清姫伝説を伝える物語や作品について軽い概要でもお話していこうと思います。どうぞよろしく。御紹介していくのは全て清姫伝説に纏わる物語となっています。興味を惹かれたならば是非お読みいただければ是幸い。

『大日本国法華験記』について

初回は『大日本国法華験記
「だいにほんこくほっけげんき」と読みます。

澄姫
澄姫

難しいね。
略して『法華験記(ほっけげんき)』とも呼ばれています。

古典文学の一つではありますが、『古事記』や『源氏物語』『今昔物語集』に比べると馴染みのない書籍でしょう。かくいう僕も、清姫伝説について調べるまで耳にした事が有りませんでしたし、知らないまま一生を終えていたと思います。

ではまず、概要からお話ししましょう。

成立

成立は今からおよそ千年程前、1040~1044年の間に成立したと言われています。

「長久年間(長久は元号。つまり、長久という元号の間という意味)に成立した」と序文に書かれており、この長久年間が1040~1044年ということです。

ばぐ
ばぐ

ちょうきゅう

作者

作者は僧侶鎮源(ちんげん)。この人に付いては詳細が不明ですが、比叡山に縁のあったお坊さんのようです。

この鎮源さんが中国にあった同じ名前の『法華験記』という本に触発され作った物らしく、所謂「日本版法華験記を作ってみた」と言うことですね。

全百二十九編となっており、法華経にまつわる仏教説話……要は「法華経って凄いね」って事を説いたお話となっています。第一編はあの有名な聖徳太子の話で、知らない物語ばっかり、という訳ではないとお分かりいただけるでしょう。

無論、清姫の話もしかり。

最初は有名なお坊さんから始まり、だんだんと名も無き一般人の話、そして最後の方は異類、即ち人間以外にまつわる話となっていきます。

そして載っている物語全てが作者である鎮源さんの創作物ではなく、他の説話集から用いられた話が幾つもあります。聖徳太子のお話もその一つ。一人で120以上ものお話を一から作るのは相当な労力ですから、何かを参照した物語が殆どでしょう。

法華験記の清姫伝説

さて、清姫の話はどの物語か。
全百二十九編のうち、大トリの第百二十九編が清姫の物語となっています。
タイトルは『紀伊國牟婁群悪女(きいくにむろぐんのあくじょ)
紀伊國は紀州の事。牟婁群も地名です。しかし悪女って、物々しいですね。

法華験記の大トリをドヤる清姫

この『法華験記』では清姫の名前も安珍の名前も登場せず、清姫が安珍を追う間に大蛇になっていく場面も描かれていません。女の所に男が止まって、嘘吐いて逃げたので追いかけたら男は道成寺に逃げ込みました、とすごくあっさりした話になっています。

清姫も家の中で大蛇になってから追いかけ始めますので、印象が相当違いますね。

知らずに読んでいたら清姫伝説とは気が付きにくいかもしれませんね。蛇が登場した辺りで「ん?」となり、道成寺という名前が登場してやっと合点がいく、言ったところでしょうか。

そしてこの『法華験記』、 清姫伝説を記した文献の中では一番古い物です。言わば原初の清姫伝説。清姫伝説の原書でもありますが。

しかし、先ほどちょっと言ったように『法華験記』の全部が鎮源さんの作り話、という訳ではありません。清姫の話も何か元になるお話があったのでしょう。もしかしたら清姫伝説は本当に起こっていたのかも……これはまた別の機会に。

ばぐ
ばぐ

跡地の謎が……!?

今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。