澄姫です。
清姫伝説の作品紹介五回目ですが、ちょっと寄り道のようなお話。
今回は『道成寺物』についてです。
道成寺物とは?
概要
最初に、『道成寺物』とは何か?
道成寺の名前からして清姫伝説に関係のあることがうかがえるかもしれませんが、いったいなんぞや、という話からですね。
これまでにお話した『道成寺縁起』や『今昔物語集』のように作品名ではありません。
歌舞伎・能楽・浄瑠璃などの芸能分野で、清姫伝説を題材にした作品を『道成寺物』と言います。
狭義的には能楽の『道成寺』を下地にした歌舞伎の作品群を『道成寺物』と呼ぶ事もあります。
※「狭義」「広義」は言葉の示す範囲を言っています。一般的に使われているかいないか、という観点では使用していませんのでご注意。
歌舞伎・能楽・浄瑠璃、とかとか
では次に歌舞伎、能楽、浄瑠璃とは何ぞや、というお話をしましょう。
細かく言っていくと結構きりがないので、すごく簡潔にまとめます。
歌舞伎とは江戸時代に生まれ発展したもので、簡単に言えば演劇と大差ありません。悲しい恋物語を演じたり、滑稽で面白い話をしたり、舞を披露したり、演目によって様々。そしてなにより大衆娯楽でした。今でも毎年新しい演目が生まれています。
能楽は能と狂言を合わせた総称で、歌舞伎に比べると相当にシンプルです。元々が武士のたしなみであった事も要因でしょう。ちなみに、能楽の脚本のようなものを謡曲と言います。
浄瑠璃は三味線を伴奏として詞章という言葉を述べていくものです。歌舞伎から役者を引っこ抜いて音楽を中心にした感じで、弾き語りに近いかもしれません。
更にその中で人形に演じさせたものを人形浄瑠璃と言います。いわゆる文楽というのは人形浄瑠璃の系譜の一つなのですが、他の系譜が無くなってしまったので文楽=人形浄瑠璃、とされる事が多いですね。
道成寺物其の粗筋
では『道成寺物』のあらすじについて。
清姫伝説のあらすじをそのまま元にする演目も多数ありますが、特に歌舞伎の『道成寺物』は清姫伝説の後日談となっています。
簡単なあらすじは以下の通り。
道成寺にて鐘供養が行われる事となったある日、白拍子花子という一人の白拍子がやってきて鐘を拝ませてほしいと言ってきた。坊主達は「ならば舞を披露しろ」と言い、言われたとおりに花子は舞を披露するも、だんだんと鐘への執着を露わにしていく。
花子の正体が実は清姫の怨霊であり、鐘への恨みを果たそうとするも最後は僧侶に祈り伏せられて日高川へと沈む。
白拍子(しらびょうし)は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて起こった歌舞の一種。及びそれを演ずる芸人。(wiki引用)
舞踊が中心の為、物語そのものはすごく単純なお話であると言えますね。
道成寺物の季節は春
FGO清姫の背景にも桜が描かれて御座る
なるほどきよひー
分かれに分かれた道成寺物
さて、これら芸能分野の『道成寺物』。
僕も前までは「せめて歌舞伎の道成寺物だけでも全部見たいな」と思って居ました……が。
そんな事は夢のまた夢。
『道成寺物』は歌舞伎だけで100を超え、芸能分野すべてを合わせると200を超えます。当然中には再演が望めない物もあれば名前だけ残っていて内容が失われてしまった物まであります。
めちゃめちゃ多い……
そして今も新しい『道成寺物』は生まれ続けています。
最近ですと坂東玉三郎が『幽玄』という舞踊を演じ、その中に『道成寺』がありました。
歌舞伎や能楽はDVDにもなっていますし、僕としては是非一度ご覧になって頂きたいと思っています。
特に坂東玉三郎はいいぞ。
今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。