澄姫です。
「○○と出会って人生が一変しました!」という文句は往々にしてみますが、僕の場合は正に清姫がそれだったわけで。元々古典は苦手で興味もなく、和歌山県に縁もゆかりもなければ歌舞伎など一作品も見た事がありませんでした。
それがまさか、古典を調べ上げ和歌山県に趣き歌舞伎を観劇し、果てには論文まで書いてしまう程になってしまうとは。沼って怖いですね。
さてはて、この記事のカテゴリは【清姫研究】。
即ち、普段の清姫の話よりもちょっとコアで深い話となります。清姫伝説やその他関連事項の事前知識が無いと理解しにくいかもしれませんが悪しからず。
とはいえ基本的には僕の清姫の話の記事を見ていればある程度は理解できるようにはしていきたいと思っています。
なので今回、若しくは今後数回、学問としての清姫の話をするにあたっての基本的なお話をしていきます。
『区分』という単語の定義
見出しからして今までとは毛色が違う。
今回は清姫伝説の分類・区分について。
そも分類区分とは何ぞや、という話です。
区分と分類は似ているようですがちょっと違うようで、分類は「種類によって分ける」で区分は「区別して分ける・若しくはその分け方」と広辞苑にはありました。
例えば小説だと「ホラー」「ミステリー」「純文学」「時代小説」といった風にジャンルで分ける行為そのもの分類ですが、ジャンル毎に分ける手法・方法は区分となるのでしょう。合っているかな。
もっと噛み砕いて言えば(同種のものを)纏める事を先に見たのが分類、一定の基準を基に線引きを先に見たのが区分、といった感じでしょうか。
言葉にすれば「~に分ける」が分類、「~で分ける」が区分と言った塩梅。
言い回しの問題な気もしてきている……。
解釈はともあれ、僕は区分を箱の仕切り、分類を区切られた枠の内部と捉えています。
清姫伝説をジャンル毎に分類する話
では清姫伝説の分類、区分を行っていきましょう。
先に分類から。「~に分ける」の方ですね。
清姫伝説は物語ですから、物語の形式ごとに纏めて行くとしましょう。ジャンル分けのような感覚ですね。
説話
話や物語のことで、神話・伝説・童話の総称をいう事が多い(仏教説話等)。また、それらに文学的要素を認め「説話文学」とする事もある。
- 『今昔物語集』
- 『法華験記』
- 『元亨釈書』※仏教通史であるが説話集に分類
CHECK【今ハ昔ノ】『今昔物語集』について
CHECK【原典】『法華験記』について
CHECK【其は安珍】『元亨釈書』について
絵巻物
巻物に絵を描いて物語を展開させて行き鑑賞させる形式を持ったもの。(代表作『鳥獣戯画』『源氏物語絵巻』)また、絵に対しての文を詞書(ことばがき)と称する。
- 『道成寺縁起絵巻』
- 『日高川草紙(賢学草紙・ひだか川)』
- 『道成寺縁起類本』
CHECK【転身絵巻】『道成寺縁起』について
CHECK【御伽草紙】『日高川草紙』について
芸能
歌や踊り、琴三味線に関する芸の事柄。また、映画・舞踊・音楽を始めとした大衆的な演芸も指す。
本項では歌舞伎・能楽・浄瑠璃・舞踊・映画を指すこととする。
- 能楽『道成寺』
- 歌舞伎『京鹿子娘道成寺』
- 浄瑠璃『道成寺現在蛇鱗』
- 浄瑠璃『日高川入相花王』
- 映画『安珍と清姫』
- 映画『娘道成寺』
- 舞踊『幽玄』
CHECK【鐘への恨みは】『道成寺物』について
CHECK【道成寺物集大成】『京鹿子娘道成寺』について
小説
文学の一形式で作者の創作・若しくは事実を脚色する、相応の自由性を持った文学形式。また、文章によって一定の物語を描いたもの。
- 上田秋成『雨月物語』
- 西口克己『道成寺』
- 大岡昇平『清姫』
- 大路和子『清姫物語』
絵画
芸術作品としての絵。
小林古径『清姫』八作
月岡芳年も描いてる
民間伝承
民間の間で受け継がれてきた伝承。または公的に広く流布されていない伝承。
- 『前日譚』
- 『真砂伝承』
- 『日高踊』
- 『絵本道成寺』
- 『手毬唄』
この分類は僕がジャンルを定義し、行ったものです。他の分類の仕方も存在すると思いますので悪しからず。今後、僕が清姫の話をするときはこの分類を基に行います。
清姫伝説を伝達方法で区分する話
次は区分です。「~で分ける」
一定の基準を基に線引きを行う、とお話しましたのでまずはその基準について。
この基準は『物語の伝わり方』に注視します。また、本区分に関して阿部真司氏の『蛇神伝承論序説』を参考にさせて頂いております。基本的に上で示したジャンルごとに纏めて区分します。
書承伝承
(広辞苑に記載なし)文字・文章の形式を以てして伝承されるもの。
・説話集
・小説
・絵巻物
口承伝承
口づて、若しくは文章の形式を介さずに伝承されるもの。
- 絵巻物
- 芸能
- 民間伝承
- 絵画
阿部真司氏は『道成寺縁起』を書承伝承に区分して居ますが、絵巻物は書承・口承の側面を両方持つ事が多く、一概にどちらに区分され切るものではないと僕が考えている為「どちらでもある」としています。
しかしながら如何せん『日高川草紙』は口承伝承に寄り、『道成寺縁起』は基礎が書承伝承の流れを受け継いでいる、等々のお話が御座いまして。別の研究者さん曰く「私的流れと公的流れ」と仰っていますが云々。
この辺りの話は僕の論を展開する必要もあるので、別の研究話でさせて頂こうかと。濃いぞ。
中々に長くなりましたね。基本的に清姫研究のカテゴリは濃く狭く深く、となります。
なので必然的に長くなってしまう傾向がありますが、出来得る限りわかりやすくしていきたいとは思います。
(相当に噛み砕いてはいますが、院の修士に近いレベルの話になっていきます。覚悟してね☆)
今回はここ迄。御読み頂きありがとう御座いました。
ではまた次回も……清姫の話をするとしよう。